生息域環境施設で繁殖せず 絶滅危惧、対馬のヤマネコ 初の試み、来期向け検証へ

ツシマヤマネコ野生順化ステーションで繁殖に取り組んでいた雄の「チョビ」=1月、長崎県対馬市(環境省対馬自然保護官事務所厳原事務室提供)

 長崎県の離島・対馬だけに生息する国の天然記念物で絶滅危惧種のツシマヤマネコに関し、生息域に近い自然環境を整備した島内の施設で環境省などが1月以降、繁殖の実現を目指した取り組みを進めたものの、今春までの繁殖期には成功しなかったことが27日、分かった。

 これまで動物園での繁殖例はあったが、園にいた個体を、野生生活に慣らすための公営施設に移して行う初の試みだった。繁殖の成功率が上がると期待されたが、実現に至らなかった原因は分かっておらず、来期に向け検証を進める方針。

 施設は島の南部にあり、同省が運営する「ツシマヤマネコ野生順化ステーション」で、総面積は東京ドームの1・5倍に当たる約7ヘクタール。京都市動物園から現在4歳の雌「さすな」、福岡市動物園から現在推定4歳の雄「チョビ」を昨年12月にそれぞれ移動させた後、発情行動は見られたものの、交尾はしなかった。

 施設を囲む柵越しに野生のツシマヤマネコが近づき、チョビと威嚇し合う場面もあったといい、野生の個体の行動が繁殖に及ぼす影響の有無も検証する。


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