銚子電鉄の愛称「崖っぷちライン」、発表3日後にジョルダン乗換案内サービスに表示 当初は「エイプリルフールと思っていた」 素早い対応となった理由は

ジョルダンの乗換案内検索では銚子電鉄線の愛称「犬吠崖っぷちライン」が反映されている
ジョルダンの乗換案内検索では銚子電鉄線の愛称「犬吠崖っぷちライン」が反映されている
千葉県銚子市を走る銚子電鉄の車両
千葉県銚子市を走る銚子電鉄の車両

 経営難が続く「銚子電鉄」(千葉県銚子市)が苦境を逆手に取って新たに名付けた路線の愛称「犬吠崖っぷちライン」が、冗談のような名前にもかかわらず一部の路線検索サービスで利用できるようになり、話題を集めています。中でも乗換案内サービス「ジョルダン」は、愛称の発表から3日後には表示。素早い対応が注目されますが、同社の担当者は「当初はエイプリルフールだと思っていた」と明かします。どのような経緯で迅速な表示対応につながったのかを探りました。

(デジタル編集部)

 愛称は市内の犬吠埼や屏風ヶ浦といった崖の景勝地にちなみ、観光誘客促進を目的に銚子電鉄が進めている「崖っぷちプロジェクト」の一環として導入されました。2026年3月末まで使用されます。

 銚電による愛称の命名が報じられると、ネットでは「センスに長けている」「多くの人の関心を引き寄せることで、新たな商機が生まれるかも」と関心を集めました。

 「犬吠崖っぷちライン」愛称について、銚電が最初にSNSで紹介したのは4月1日。この日はエイプリルフールに合わせ、多くの企業公式アカウントが冗談を投稿することから、ジョルダン側も当初は「エイプリルフール(のネタ)」と考えていたといいます。

◆銚電から、まさかの依頼

 ところが翌4月2日、事態は一変しました。銚子電鉄の担当者からジョルダンに「『犬吠崖っぷちライン』に変更するので乗換案内でも対応をお願いしたい」との連絡があったのです。これを受け、ジョルダンは対応を協議。愛称への対応を決断し、可能な限り早くリリースできるように準備を開始しました。

 銚子電鉄が報道機関に愛称変更のリリースを送り、公式サイトで告知したのは4月3日。ジョルダンはこの間も対応を進め、翌4月4日には早くも愛称を反映させました。

◆「利用者の分かりやすさが第一」

 実は今回のように、愛称を検索結果に反映させるのは、あまり一般的ではないといいます。ジョルダン側は「可能な限り表示できればと思ってはおりますが、やはりすべてに対応できるわけではありません」と説明します。それではなぜ、対応したのでしょうか。

 ジョルダンによると、表示は独自のポリシーに基づいています。愛称が「公式かどうか」だけが判断基準ではなく、現地や公式サイトでの案内、関連する他の鉄道会社の対応など、様々な要素から表示の可否を決めるといいます。「乗換案内は、利用者の分かりやすさが第一。現地でのアナウンスと自分の見ている画面が一致することで、安心して利用できます」と担当者。つまり、利用者の「使い勝手」を最も重視しているということです。

 今回の「犬吠崖っぷちライン」の場合、接続するJR側も協力し、駅などでアナウンスに利用されることが判明。こうした点が「対応する決め手の一つ」になりました。

 一方、過去には愛称の発表から数年間、表示対応されなかった路線もあるといいます。この愛称は制定当時、一般になじみがなく、乗り換えできる他の鉄道会社での案内表示も対応していなかったため、当初は利用者に混乱を招きかねないと判断していたそうです。

◆銚電・竹本社長「大変ありがたい」

 こうした対応に、銚子電鉄の竹本勝紀社長は「応援の気持ちで反映してくれたのだと思う。対応してもらえて大変ありがたい」と謝意を示し、「より多くの人々が温かい気持ちになり、少しでも楽しんでもらう機会になれば」と話していました。

 鉄道やバス路線の廃止・廃駅が続くなか、ジョルダンの担当者は「交通業界のプレイヤーの一つとして、交通網を支える事業者や自治体、利用者の方の力になり、交通需要を生み出していきたい」と強調。銚子電鉄とも連携したいとの意向を示しています。

 銚子電鉄は、関西私鉄・南海電鉄から購入した車両を観光列車に改修し、今春から運行を開始するなど、観光路線として集客に力を入れています。「崖っぷち」の経営状況を逆手に取った取り組みがさまざまな媒体に広がることで、犬吠埼や屏風ケ浦といった美しい「崖」のある沿線風景が知られる機会につながることも期待されます。


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