

歴史的建造物が立ち並び、江戸情緒が残る香取市の佐原の町並み。JR佐原駅から徒歩8分の通り沿いに店を構える食堂「おけまつ」は、「佐原に来たら『おけまつ』の丼を食べないと帰れない」と昔から多くの人たちに愛されてきた。
店名は初代、松太郎が創業し、明治まで桶屋だった名残。1912(大正元)年に食堂を始めた。
看板メニューは、県産ブランド豚を使用し、コクのある秘伝のたれで味付けした「カツ丼」(税込み1150円)。丼物に欠かせない米は、甘みがあるのが特徴の香取産の米にこだわっている。
「昔は店のそばに、消防署や警察署、町役場があり、商店街の中心だった。高度経済成長期の60年代後半~70年代半ばに、公共施設が建て替え更新で移転してしまった」と振り返るのは、先代の高須張寿さん(85)と5代目で息子の邦之さん(63)。
駅前には百貨店があったこともあり、成田市や銚子市からも買い物客が集まってきたという。邦之さんによると、佐原で買い物や映画鑑賞をし、おけまつでカツ丼を食べて帰るのが定番コースだった。
店前の通りは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている同市の伝統の祭り「佐原の大祭」の山車が通る主要コース。交差点では祭りの見せ場の一つで「の」の字を描くように山車を回転させる「のの字廻(まわ)し」が披露されることもあり、にぎわう。
邦之さんは「子どもの頃は、地元の人や周辺の買い物客だった。今は観光客の割合が増えた」と客層の変化を口にする。店は家族で切り盛りしている。「うちのカツ丼は豚肉も米も一番いい物を使っている。佐原を訪れた際はぜひ味わってほしい」と笑顔を見せた。
◇メモ
◆住所=香取市佐原イ525
◆営業時間=午前11時~午後8時(水曜日定休)
◆問い合わせ=(電話)0478(52)3188< ・・・
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