木更津の看護学校大量自主退学 新証言「他の学年でも」 パワハラ?第三者委調査 【ちば特 千葉日報特報部】

第三者委員会の設置が決まった木更津看護学院が入る建物=2月、木更津市(画像の一部を修正しています)
第三者委員会の設置が決まった木更津看護学院が入る建物=2月、木更津市(画像の一部を修正しています)

 木更津市の木更津看護学院で生徒が相次いで自主退学し、教員のパワハラを訴えている問題は、千葉日報社などの報道を受け学校側が第三者委員会を立ち上げる事態に発展した。本紙に寄せられる新たな証言は今も後を絶たない。一方で、専門家からは命を預かる現場ゆえに指導が厳しくなり、「パワハラを生みやすい体質」との指摘も聞かれる。

(「ちば特」取材班 島津太彦)

 1年生38人のうち約4割に当たる15人が自主退学した同校。その後も本紙には別の学年の元生徒や保護者からもパワハラを訴える新たな証言が多数寄せられている。

 女性教員から「看護師に向いていないから学校を辞めな」「もう死んだ方がいい」などと暴言を受けたり、男性教員からも「お前がいるとろくなことがない。帰れ」と繰り返し怒鳴られたとの訴えもある。

 さらに、複数の証言によると、大量自主退学は1年生だけでなく、今月卒業した2年生についても。「入学以降、10人以上が退学した」との情報もある。

 同校は2月、本紙の取材に、在籍中の教員によるパワハラの事実はないと否定。だが、約2年前に退学した生徒1人についてはパワハラが理由と認めた上で「当該職員には辞めてもらった」と明らかにした。

 一方で、校内の現状については定員割れが続き「生徒の質が低下し、授業風景がひどい」ともしている。

 第三者委は、弁護士や学識経験者、人権擁護委員などで構成。パワハラの有無や実態を公正中立な立場で調査・検証する。元生徒の1人は「業界のつながりで人選されたら困る」と委員の開示を求めた。

 本紙には、県外の看護学校に通うという生徒からも行きすぎた指導や大量退学の情報が寄せられている。ある関係者は「看護は命を預かる仕事。普通の学校の授業とは違う」と厳しい指導に一定の理解を示した。

◆「学生が納得いく指導を」

 木更津看護学院におけるパワハラの有無は第三者委の調査に委ねられるが、看護教育に詳しい県内の専門家は「医療界にパラハラを生みやすい体質はあったかもしれない」と指摘する。

 専門家は取材に「医療の現場は命を最優先に考えることから、昔は厳しい人が多く『医師からメスを投げられた』という話もあった」と明かす。

 だが、「現在は根性論でたたき直すようなことはない」と強調。むしろ「医療界に限らず、ハラスメント防止を徹底していない職場では昔の体質を残している可能性もある」と警鐘を鳴らす。

 木更津看護学院については「パワハラが事実なら、組織として防止策が不十分。不適切な成績や態度の学生がいたら何が不適切なのか納得のいく指導をするべき。『向いていないから辞めなさい』と断言してしまうのは学生の道を閉ざし、人権問題につながる」とした。

 第三者委には「4割もの退学は普通では考えにくい。調査は時間がたつにつれて難しくなる」などとし、速やかで丁寧な関係者の聞き取りと事実確認を求めた。


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