2022年9月1日 11:00 | 有料記事

停電時に役立った防災リュック。ランタンなどが入っている=木更津市
ガタガタガタ、ミシミシ-。経験したことのないような暴風が購入して1年のマイホームを揺らす。「これヤバイね」。あまりの風の強さに木更津市の団体職員、小磯亮平さん(35)一家は眠れずにいた。窓は閉まっているか、雨漏りはしていないか。妻の理恵さん(33)は、ただただ家の中を「ウロウロ」していた。傍らには長女の凛乃(りの)ちゃん(3)、そしておなかには新たな命が宿っていた。(地方部・武内博志)
※この連載は2020年3月、千葉日報本紙とYahoo!ニュースで公開したものを再掲載しました。肩書きや年齢、データなどは掲載当時のものです。
房総半島台風(台風15号)が襲来した昨年9月9日。猛威に不安を募らせていた午前2~3時ごろ、小磯家の部屋の明かりはフッと消えた。4日半に及ぶ停電の始まりだったが、夫妻はこの時、県内であれほどの長期・広域停電が続くとは思いもしなかった。
◆暗闇にランタン

「すぐに復旧するだろう」。そう思いながら、小磯さんは前年6月に買った防災リュックからランタンを取り出し、暗闇を照らした。頻発する地震で購入者が増えているとのニュースを見て、インターネット通販で1万7500円で入手した防災グッズだ。携帯ラジオや非常食、簡易トイレなど災害時に必要な道具が入っている。一家はランタンのわずかな明かりで一夜を過ごし、ほとんど眠ることはできなかった。
夜が明けると、隣家の屋根が吹き飛んでいる衝撃の光景が飛び込んできた。自宅は網戸が破れる程度の被害で済んだが、暴風の威力はすさまじかった。