「もう終わりだ」梨農家救ったヤマト運輸からの電話 つながりが備えに 【千葉「災」の時代に】

落ちた梨を拾い集める与佐ヱ門の従業員=2019年9月10日、富里市(同社提供)
落ちた梨を拾い集める与佐ヱ門の従業員=2019年9月10日、富里市(同社提供)

 全国有数の農業県、千葉を襲った台風15号。建物や木々をなぎ倒した猛烈な風は、容赦なく収穫前の農産物にも牙をむいた。収穫量、出荷量ともに全国1位を誇る県名産の梨もその一つ。落下して傷がつき、売り物にならなくなった。「もう終わりだ…」。絶望の淵に立たされた農家を救ったのは、普段から付き合いの深い運送会社からの電話だった。(報道部・山崎恵)

※この連載は房総半島台風(台風15号)から半年の2020年3月、千葉日報本紙とYahoo!ニュースで公開したものを再掲載しました。肩書きや年齢、データなどは掲載当時のものです。

 2019年9月9月。市川市で約200年続く老舗農家「与佐ヱ門」の8代目、田中総吉さん(48)は農園の変わり果てた姿を見て絶句した。畑を覆う網は吹き飛び、1年間手塩にかけて育てた梨が無残に転がっている。想像以上の被害だった。

 9月中旬~10月中旬が収穫最盛期の品種「新高」は、収穫まで2週間を切っていた。「今年の出来は最高」と周囲にも伝えたばかり。従業員総出で実を拾い集めながら、脳裏に「再起不能」の言葉がよぎった。

 そこへ一本の電話がかかってきた。「総吉さん、畑は大丈夫ですか」。相手は普段から与佐ヱ門の梨の出荷を担うヤマト運輸の市川国分支店長(当時)、大城功三さん(44)。「傷んでしまって捨てるしかない。もう終わりだ…」。いつも豪快で明るい田中さんのただならぬ気配を感じた大城さんは、とっさに叫んだ。「なんとかしましょう、僕にできることは何でもします!」

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【残り 5014文字、写真 10 枚】



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