2022年5月17日 05:00 | 有料記事

画・佐藤 辰作
モノクロ写真に写っていた兄の無表情で痩せた姿は、痛々しくもあり充之も直視し難かった。実物の兄と対面することで更にその不憫さが増す現実を思うと、その足は鉛を付けられたように重く感じる。
受付で来訪の旨を告げて担当者に先導されると、充之は二階にある陽差しに満ちた一室まで案内された。病室に似た赴きであったが、そこは病室ではない。ベッドでこちらに背を ・・・
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