【海の声を聴く】(6) 作・蓮見仁

画・佐藤 辰作
画・佐藤 辰作

 モノクロ写真に写っていた兄の無表情で痩せた姿は、痛々しくもあり充之も直視し難かった。実物の兄と対面することで更にその不憫さが増す現実を思うと、その足は鉛を付けられたように重く感じる。

 受付で来訪の旨を告げて担当者に先導されると、充之は二階にある陽差しに満ちた一室まで案内された。病室に似た赴きであったが、そこは病室ではない。ベッドでこちらに背を ・・・

【残り 1555文字】



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