【海の声を聴く】(3) 作・蓮見仁

画・佐藤 辰作
画・佐藤 辰作

 それからの漆原課長の行動は早かった。翌朝の新幹線の切符を予約すると、即座に有給の取得を申請し、旅の準備を始めた。兄と思しき人物が収容されているのは日本海に面した県の、とある地方の町の施設だった。無論訪れた経験は無かったが、彼を瞠目させたのは兄が保護されたという場所と土地柄についてであった。

 どう頭を働かせても、それは納得し辛い現場にあった。本来で ・・・

【残り 1571文字】



  • Xでポストする
  • LINEで送る