2022年5月18日 05:00 | 有料記事

画・森津和嘉子
七月始め、一月後に閉館する『丸光百貨店』の屋上遊園地『わくわくランド』で、咲彩(さあや)は真っ青な髪に目を奪われた。その人は明滅する電飾が数個点いている小さな観覧車の前にしゃがみこみ、写真を撮っていた。ボブヘアーが青草のように風にあおられる。咲彩が一歩近づくと、気配を感じたように振りむいた。咲彩と同じくらいの年の少女だった。目を合わせた彼女は「あーっ」と叫んだ。
「いい所に!」
初対面の少女だ。放った言葉の意味が分からない。彼女は立ちあがって言った。
・・・【残り 2073文字】