第63回千葉文学賞受賞作品「おばーのゲルニカ」

画・芝 章一
画・芝 章一

 第63回千葉文学賞を受賞した鳥光宏さんの作品「おばーのゲルニカ」の掲載ページです。

 大学進学のため沖縄に移住した若者が、アパートを経営する“おばー”との交流から、人生観を見つめ直す姿が描かれる物語。戦争や基地問題といったテーマに、ピカソの「ゲルニカ」を重ねる手法に称賛の声が相次いだ作品です。挿絵は芝章一さん。

受賞作品を読む▼

(1) (2) (3) (4) (5) (6)

◆受賞の言葉

 「沖縄のおばーとピカソのゲルニカを重ね合わせ、日本古典の持つ色彩感覚を生かした純文学の王道を歩いてみたい」そんなおぼろげな構想を持ちながらも、魂を揺さぶるようなフレーズがなかなか浮かんで来なかった。

 ある日、ゲルニカの絵葉書を眺めながら、かつての沖縄生活に思いを馳せていた。突き抜けるような青空や、濃緑のサトウキビ畑が広がる中で、目の前にはモノクロの絵葉書が置かれていた。夕暮れ時、折から差し込むほんのりとした光の中に、『昔、リンゴの色は黒だった』というフレーズが舞い降りてきた。この天から授かった声に導かれ、本作は完成した。

 今回の受賞に感謝し、これをさらなる精進の糧にして、文学の持つ責任を果たしてゆこうと思っています。

◇とりみつ・ひろし 1959年生まれ、東京都出身。旧東京都立水元高-琉球大、法政大卒。予備校講師。松戸市在住。


  • Xでポストする
  • LINEで送る