波がつくる小宇宙表現 黒潮をアートにした彫り師・伊八 【黒潮ものがたり 紀伊・房総】(23)

飯縄寺境内と欄間彫刻(右下=観光マップより)
飯縄寺境内と欄間彫刻(右下=観光マップより)

 房総半島太東岬のふもとに由緒ある飯縄(いづな)寺(いすみ市)があります。源義経が奥羽に向かう途中、同寺に立ち寄ったという故事にならって、安房国の彫り師・伊八が欄間に彫った傑作があるといいます。

 飯縄寺の山門に立つと立派な仁王像に迎えられ、村田住職によって古刹(こさつ)の雰囲気のある本堂に導かれました。住職は誇らしげに向拝の「龍」欄間に「牛若丸と大天狗」「波と飛龍」の彫刻を見せてくれました。見学の後、伊八はなぜ「波」「龍」を彫ったのかと疑問が沸いてきました。

 彼は江戸時代中期、安房国長狭郡下打墨村(鴨川市打隅)で代々名主を務めた武志家の5代目として生まれました。武志伊八郎信由。手が器用なので10歳から彫刻を始め、躍動感と立体感あふれる「横波」を彫って作風を確立しました。

 ここからは私の推測です。10歳の少年は毎日 ・・・

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