2024年9月8日 05:00 | 有料記事

防災拠点に設置した衛星通信サービス「スターリンク」の特長を説明する芳賀さん=南房総市
2019年の房総半島台風(台風15号)で特に甚大な被害を受けた安房地域で、今なお懸念されるのが災害時の孤立。今年1月の能登半島地震を受けて行われた県の調査で、安房3市1町は計125集落が孤立する可能性が示された。房総半島台風の際に孤立した経験がある南房総市大井地区では、自主防災組織を中心に、次の災害に備えた「一歩先」の対策が進められている。
日本酪農発祥の地で知られ、三方を山で囲まれた中山間地域に位置する大井地区。美しい星空が見える、のどかな農村地域を5年前、経験したことのない暴風雨が襲った。
倒木により道路が寸断され、地区全体で停電が発生。通信障害で外部との連絡も取れなくなった。行政の支援も思うように進まない中、地区住民の生活を支えたのが地元組織「大井自主防災かわせみ」だった。
「かわせみ」の事務局長、芳賀裕さん(72)は、東日本大震災で被災地を訪れ、自主防災の必要性を痛感。12年、有志と「かわせみ」を結成した。「孤立して行政の支援が来ない」ことを前提に準備を進め、5年前の台風被害では、防災拠点に発電機を設置し炊飯や携帯電話の充電などに必要な電力を供給。弁当を作って住民に配ったり、断水世帯に水を届けたりして、9日間にわたる停電を乗り切った。
◆「二重の対策」導入
各地で災害が起きるたびに、そこで得た教訓を地域の防災対策に反映させてきた「かわせみ」。今年元日に発生して断水が長期化した能登半島地震を受け、対策を急ぐのが「生活用水の確保」だ。
「かわせみ」の防災拠点の一つ「みねおかいきいき館第2体験館」では現在、断水や渇水などで市の水道が使えなくなっても大丈夫なように、市 ・・・
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